「うつ病が10年以上治らない」と感じている方にとって、その長く続く不調は非常につらく、孤独で、出口の見えないトンネルの中にいるような感覚かもしれません。実際、うつ病は心の病とされますが、その実態は脳内の神経伝達物質、特にセロトニンの不足による「脳の不調」と捉えられており、心身両面にわたる幅広い症状が現れることがあります。
うつ病には、気分の落ち込みだけでなく、不安、意欲や集中力の低下、食欲不振、疲労、頭痛、吐き気、行動の変化(例えば人付き合いを避ける、声が小さくなるなど)といった多様な症状が伴います。こうした症状が長期にわたって続く場合には、単に「治りが悪い」というよりも、慢性化してしまっている可能性が高くなります。

うつ病が10年以上続く場合、その背景には単一の原因ではなく、いくつもの要素が複雑に絡み合っていることが多いとされています。主に考えられる要因として、以下の4つが挙げられます。
抗うつ薬は、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)をはじめ、多数の種類があります。これらはすべての人に一律に効果があるわけではなく、合う・合わないには個人差があります。場合によっては複数の薬を組み合わせたり、補助薬(例:アリピプラゾール)を併用することで症状の改善が見られることもありますが、すでに多くの種類の薬を試してきた人も少なくありません。
生活環境や職場、人間関係などが長期的にストレス源となっている場合、それだけでうつ病の慢性化を招くリスクがあります。また、本人の思考パターンや生活リズムなど、内的な要因が影響することもあります。
対策としては、以下のようなストレスマネジメントが有効です。
これらはすぐに結果が出るものではありませんが、少しずつでも継続することで、じわじわと効果を発揮することがあります。
うつ病の診断で治療を続けてもなかなか改善が見られない場合、実は「双極性障害(躁うつ病)」だったというケースもあります。特に「双極性障害II型」は、軽躁状態(気分が軽く高揚する状態)が目立たず、うつ症状のみが表に出るため、うつ病と区別がつきにくい特徴があります。
このようなケースでは、一般的な抗うつ薬が効かないばかりか、場合によっては逆効果になることもあるため、「気分安定薬」への切り替えが必要になります。ご自身や家族の中に気分の波が大きかった方がいる場合は、この観点もぜひ視野に入れてみてください。
発達障害(ASD=自閉スペクトラム症、ADHD=注意欠如多動症など)は、生まれつきの脳機能の偏りにより、社会生活の中で生きづらさを感じることが多くあります。そのため、慢性的なストレスを感じ続けることで、二次的にうつ病を発症・長期化するケースが存在します。
このような合併がある場合には、うつ病だけでなく、発達障害の特性への理解と支援も必要になります。心理検査や専門医の診察を通して、総合的な診断・支援体制を検討することが勧められます。

近年、「重ね着症候群」という表現が使われるようになっています。これは、発達障害にうつ病、不安障害、パーソナリティ障害などが重なって現れる状態を指し、診断や治療が一層複雑になる特徴があります。
こうした重なりがある場合、どれか一つの問題を取り除くだけでは十分な改善が見込めないため、多角的なアプローチが求められます。例えば、
などを組み合わせて取り組むことが効果的です。
10年以上続くうつ病に対して、「もう治らないのでは」と思ってしまうのは当然のことです。しかし、その陰には、さまざまな要因や見落とされやすい合併症、あるいは環境の問題などが潜んでいる可能性があります。
大切なのは、一度立ち止まり、これまでの治療の経過や日常生活をあらためて振り返ること。そして、信頼できる医療者や支援者とともに、一つずつ問題を紐解いていく姿勢を持ち続けることです。
「できることから、少しずつ」。それが、慢性化したうつ病においても、希望の光を取り戻すための第一歩となります。