うつ病や不眠症は、現代社会において多くの人が悩まされる代表的な精神疾患です。精神科外来でもこれらの症状を訴える患者さんは少なくなく、医療機関での相談件数も非常に多いのが現状です。
一見すると別々の病気のように思える「うつ病」と「不眠症」ですが、実際には密接な関係を持っています。今回は、両者の関係性を理解するために、「うつ病と不眠症の関係」について、特に注目すべき5つの視点から解説していきます。

1. うつ病と不眠症はよく合併する
うつ病と不眠症は、それぞれ独立した病気であるにもかかわらず、実際にはしばしば同時に発症することがあります。背景には共通する要因、特に「ストレス」があります。
ストレスは脳や自律神経に影響を与え、気分の落ち込みを招いたり、睡眠の質を低下させたりすることがあります。そのため、うつ病と不眠症の両方を併発するケースは珍しくありません。実際、うつ病の診断を受ける人の多くが、何らかの睡眠障害を経験しているといわれています。
また、不眠症の背景にうつ病が潜んでいるケースもあり、単なる睡眠の問題だと考えていたら、実はうつ病の初期症状だったということもあります。
2. うつ病が原因で不眠になる
うつ病の症状のひとつとして「不眠」が現れることがあります。精神的な落ち込みや不安感、興味・意欲の低下、集中力の低下などの症状が睡眠にも影響を及ぼし、結果として眠りにくくなることがあるのです。
とくに「反すう思考(同じ否定的な考えを繰り返し続けること)」は、夜間に起こりやすく、入眠を妨げる要因となります。さらに、日中の活動量が減ることで生活リズムが乱れ、夜になっても眠くならないという状態を招くこともあります。
うつ病による不眠には、以下のような原因が考えられます:
これらの要因が重なり合い、うつ病に伴う不眠が慢性化してしまうこともあるため、早期の対応が重要です。
3. 不眠がうつ病を悪化させる
逆に、不眠が続くことによって、うつ病が悪化することもあります。特に数日から1週間以上の不眠が続くと、心身の疲労が蓄積され、抑うつ状態が一気に悪化することがあるのです。
この背景には以下のような要因があります:
また、不眠によって夜眠れず、日中に居眠りをしてしまうと、生活リズムがさらに乱れます。この「夜眠れない→昼に寝る→また夜眠れない」という悪循環は、うつ病の悪化にもつながります。
4. 不眠の改善がうつ病の回復を促す
うつ病治療においては、まず「睡眠の改善」に取り組むことが多いです。これは、睡眠が心身の回復において非常に重要な役割を果たすためです。
抗うつ薬は効果が現れるまでに数週間かかる場合が多いため、その間の休養の確保が重要になります。そこで用いられるのが、即効性のある睡眠薬です。
たとえば、以下のような治療方針がとられることがあります:
このように、睡眠の改善はうつ病の治療において大きな意味を持ち、時にはうつ病そのものの改善を早めることにもつながります。
5. うつ病の改善が不眠の解消につながる
うつ病の症状が緩和されると、それに伴って不眠の症状も改善するケースが多く見られます。これは、うつ病によって引き起こされていた睡眠障害が、原因の根本であるうつ病の改善によって自然と解消されるためです。
抗うつ薬や休養によってうつ状態が改善されてくると、不安感や反すう思考が減少し、夜もリラックスして眠れるようになってきます。このような状態になれば、当初用いていた睡眠薬を減量し、最終的には中止できることもあります。
ただし注意すべきは、うつ病が改善しても不眠が完全には治らないケースもあるという点です。慢性的な不眠が残ると、再度うつ病が悪化するリスクにもつながります。したがって、睡眠薬の減薬については、睡眠環境の整備や生活習慣の見直しなど、薬以外の対策がしっかりと整ってから慎重に進めていくことが推奨されます。
まとめ
うつ病と不眠症は、それぞれ独立した疾患ではありますが、非常に深い相互関係を持っています。今回ご紹介したように、両者の関係性は以下の5点に集約されます。

精神疾患の治療では、「こころ」と「からだ」の両面に目を向けたアプローチが大切です。うつ病や不眠症でお悩みの方は、これらの関係性を理解し、適切な治療につなげることが回復への第一歩となるでしょう。