双極性障害(躁うつ病)は、躁状態(気分が高揚し、活動的になる状態)と抑うつ状態(気分が沈み、意欲が著しく低下する状態)を繰り返す精神疾患です。この病気は、生活の質を大きく左右するだけでなく発症や再発を繰り返す中で本人だけでなく周囲の人々にも大きな影響を与える可能性があります。
近年、治療法の進歩や病態に関する理解が深まる中で「性格傾向」が双極性障害の発症や経過に影響を与えているのではないかという視点に注目が集まっています。
本記事では、双極性障害に関連するとされる代表的な性格傾向について詳しくご紹介するとともに、自分自身の性格を理解し、ストレスをため込まないための工夫についても解説します。

双極性障害との関連が深い性格傾向として、最も知られているのが「循環気質(Cyclothymic temperament)」です。この概念は、ドイツの精神科医エルンスト・クレッチマーによって提唱されました。クレッチマーは、特定の気質を持つ人々が双極性障害を発症しやすい傾向にあることを指摘しました。
循環気質を持つ人には、以下のような特徴がみられます。
しかし一方で、循環気質には大きく分けて2つのタイプが存在します。
このタイプはエネルギッシュでリーダーシップを発揮することが多く、周囲を引っ張っていく力があります。しかしその反面、気分の浮き沈みが激しく、落ち込みが訪れると一気に意欲を失う傾向もあります。
こちらのタイプは、他者に気を遣いすぎてストレスを抱えやすく不安や抑うつ状態になりやすい傾向があります。
このように、循環気質の持ち主は感情の起伏が比較的激しいためストレスの影響を受けやすく、気分の波が大きくなると「循環病質」や「双極性障害」へと移行する可能性があります。そのため、自身の気質を理解し、早めに適切なケアを行うことが大切です。
従来、気分障害は「うつ病」または「双極性障害」のいずれかに分類されていましたが、アメリカの精神科医ハグオップ・アキスカルはこのような二元的な分類に限界があるとし、「双極性スペクトラム(Bipolar spectrum)」という新たな概念を提唱しました。この考え方では、双極性障害は連続的なスペクトラム(連なり)の中に位置しており、診断に至る前の「軽症型」や「気質」として、以下の4つの性格傾向が存在するとされています。
この気質は、躁病に近い性格傾向とされます。自信過剰になりやすく、自己評価が高すぎることで人間関係に摩擦が生じることもあります。
うつ病に関連が深い性格傾向です。本人にとっては「普通の性格」と感じていても、日常生活に影響が出るほど落ち込みが続く場合は注意が必要です。
躁とうつが混在する「混合状態」に近い性格傾向です。内面の不安定さから、人間関係に悪影響を及ぼすことがあります。
先述の循環気質とほぼ同義で、気分の波が比較的頻繁に訪れるタイプです。明るく社交的な面と、内向的で抑うつ的な面が交互に現れるのが特徴です。
双極性障害に関連するとされる性格傾向は他にもあります。代表的なものとして以下の3つが挙げられます。
物事に対して真面目で粘り強い反面自分の期待に応えようとしすぎてストレスを抱えることが多いです。
この気質は、うつ病との関連が深いとされています。人に頼まれると断れず、自己負担が大きくなってしまう傾向があります。
双極性障害Ⅰ型に関連が深いとされ、周囲との衝突が目立つ場合は注意が必要です。

性格傾向は「病気そのもの」ではありませんが、自身の性格的特徴を理解することで、気分の波やストレスに対処しやすくなります。以下に、性格傾向別のストレス対処法を紹介します。
| 性格傾向 | 対策のポイント |
|---|---|
| 循環気質 | 無理に周囲に合わせすぎず、自分のペースを守る |
| 発揚気質 | 冷静な判断を心がけ、空回りを避ける |
| 刺激性気質 | 感情のコントロールを意識し、リラックス法を取り入れる |
| 執着性格 | 完璧を目指しすぎず、適度な手抜きを意識する |
| メランコリー親和型 | 自責の念を和らげ、自分に優しく接する |
| マニー親和型 | 客観的に自分を見つめ、周囲の意見に耳を傾ける |
双極性障害に関連する性格傾向はさまざまですが特に循環気質や発揚気質、執着性格などは、病気の背景にある「気質」として注目されています。自分の性格を理解することは、ストレスのコントロールや、早期の異変に気づくための第一歩です。
「性格」は変えるものではなく、うまく付き合っていくものです。自分自身の気質と向き合い、必要なサポートを受けながら無理のないペースで毎日を過ごしていくことが、心の健康を保つカギとなるでしょう。