心の不調を感じたとき、「精神科を受診すべきだろうか」と悩まれる方も少なくありません。実際に精神科の外来を受診するとなると、「どんなことをするのか分からない」「診断や治療はどのように進むのか」といった不安を感じる方も多いのではないでしょうか。
今回は、精神科の外来を初めて受診した際に行われる主な流れや、初診時に行う5つの大切なことについて、わかりやすく丁寧にご紹介します。

精神科の外来では、内科のような聴診や触診といった身体的な診察は基本的に行われません。精神科の診療では、患者さんの心の状態や背景を丁寧に把握することが重要となるため、「問診」が中心となります。
問診では、以下のような内容について医師と対話を通じて確認していきます。
こうした情報をもとに、医師は患者さんの状態を多面的に理解し、適切な診断と治療方針の検討に繋げていきます。
初診での問診をもとに、以下の5つの取り組みが進められます。
問診を通して得られた情報をもとに、精神疾患の診断基準(DSM-5)に照らし合わせて診断が行われます。ただし、すべてのケースで明確に診断が確定するとは限りません。特に症状が非典型的である場合は、複数回の診察を経て診断が定まることもあります。
初診の段階では、医師が「現時点で最も可能性の高い診断」と「今後の見通し(見立て)」を丁寧に説明し、患者さんと共有します。同じ診断名であっても、その背景や環境、対処能力は人それぞれですので、個々の事情に応じた判断が必要です。
診断と見立てをもとに、今後の治療方針を決定します。この際、「SDM(Shared Decision Making:共有意思決定)」という考え方が重視されます。これは、医師と患者さんが情報を共有しながら、治療方針を一緒に決めていくプロセスです。
治療方針に含まれる主な内容は以下の通りです。
なお、治療は原則として外来で進めることが望ましいですが、危険行動のリスクが高い場合や自傷他害のおそれがある場合には、入院治療が選択されることもあります。
治療方針の中でも「仕事をどうするか」という点は非常に重要です。多くの場合、心身の回復を優先するためには一定期間の休養が必要とされますが、経済的事情などから仕事を続けざるを得ない方もいます。
経済的な安定が保てる一方で、ストレス環境が続くため症状が悪化しやすいリスクも伴います。症状が改善しない場合には、無理をせず休職を検討することが望まれます。
特にうつ病では、休職期間として3か月程度が目安とされることが多く、十分な休養をとることで治療効果が高まりやすくなります。健康保険に加入している場合、「傷病手当金」の申請が可能なため、経済的支援を受けながら療養することができます。
休職や復職の際には医師による診断書が必要になります。診断書は診察をもとに必要性が認められた場合に作成されます。発行には文書料がかかりますが、業務軽減や就労調整の際にも重要な役割を果たします。
精神症状のように見えても、実際には身体的な疾患が隠れていることがあります。そのため、必要に応じて身体的な原因の有無を確認する検査が行われることがあります。
代表的な例として以下のような身体疾患が挙げられます。
これらの検査は、症状の背景を明らかにし、より適切な治療を行うために重要なプロセスです。
診断と治療方針に基づき、必要に応じて薬が処方されます。近年では「院外処方」が主流で、診察後に調剤薬局で薬を受け取る形になります。
薬には効果とともに副作用もあるため、初診後の再診で副作用の有無や効果の程度を確認しながら、必要に応じて薬の種類や量の調整が行われます。
長期的に服用が必要な薬もあれば、一定の改善後には減薬を検討すべき薬もあります。薬の調整は、症状、体調、ライフスタイルとのバランスを考えながら、医師と相談して進めることが大切です。

精神科外来の初診では、心の状態を正しく理解するために問診を通じた丁寧な情報収集が行われます。そして、その後の診察では以下の5つの主要な取り組みが進められます。
心の不調は目に見えにくく、対応が遅れがちになることもあります。しかし、適切な診断とサポートを受けることで、少しずつでも確実に回復への道を歩むことができます。
精神科の外来は、その第一歩を踏み出す大切な場です。不安を感じたときは、ひとりで抱え込まず、ぜひ専門医のもとを訪れてみてください。