統合失調症は、適切な治療と支援によって改善が期待できる精神疾患です。病状が安定してくれば、日常生活への復帰や社会参加といった目標も見えてきます。そのため、回復期は「次のステップに進む準備の時期」と捉えられることも少なくありません。
しかしその一方で、回復が進んだからこそ気づく悩みや葛藤も存在します。以前と比べて生活は整ってきたものの、「なぜ前のようにできないのか」「この先どうすればよいのか」といった迷いや不安を抱える方も多いのが実情です。
本記事では、統合失調症の回復期に見られる主な症状や心理的な葛藤について詳しく解説し、その乗り越え方や考え方についても丁寧に触れていきます。

統合失調症は、主に幻聴や妄想といった「陽性症状」が目立つ急性期に始まり、その後、段階を経て回復へと向かっていきます。病期は以下の4つに分けられます。
回復期は、病状が一定の安定をみせ、生活への支障も少しずつ改善される時期です。しかし、完全に元通りになるわけではなく、症状が残っていたり、新たな課題が浮かび上がったりすることも多くあります。

統合失調症では、記憶力や集中力、思考の柔軟性といった「認知機能」が低下することがあります。これは急性期から始まっていることもありますが、陽性症状や陰性症状が改善してきた回復期に、むしろ目立つようになります。
認知機能が低下すると、以下のような影響が出ます。
こうした変化によって、以前の自分とのギャップを感じ、無力感や落ち込みを覚えることもあります。
陰性症状とは、本来あるはずの意欲や感情の働きが乏しくなる症状です。具体的には「やる気が出ない」「感情が湧きにくい」「人付き合いが億劫になる」などが挙げられます。
回復期には徐々に改善は見られますが、それでも一部残ることが多く、生活の質に影響を及ぼします。新しいことへの興味が湧かず、社会復帰の意欲が湧かないこともあり、結果として孤立してしまうこともあります。
さらに、長期間の治療や将来への不安から、うつ症状が加わる場合もあります。この場合は、抗うつ薬を使用するかどうかを含め、慎重な治療の調整が必要になります。
回復期で症状が安定していても、再発のリスクは常に存在します。特に、社会復帰を目指して新しい環境に挑戦する際には、ストレス負荷が高まり、再発につながることがあります。
再発を防ぐためには、以下の対策が重要です。
回復期では、どこまで負荷をかけても大丈夫か、その「自分にとってのバランス」を見極めることが大切になります。
安定しているにもかかわらず、薬を飲み続けなければならないことに対する葛藤も、回復期においてよく見られます。
なぜなら、回復期では薬の効果がはっきりと見えにくくなる一方で、副作用は強く意識されやすくなるためです。また、「薬を飲み続ける=まだ治っていない」という意識が芽生え、受け入れがたい気持ちになることもあります。
しかし、服薬を自己判断で中断すると、再発し、場合によっては以前よりも重い状態に戻ってしまうことがあります。そのため、主治医と相談しながら、自分の病気との付き合い方や服薬の意義について見つめ直すことが大切です。
回復期には、「もう以前の自分には戻れない」と実感する瞬間も増えてきます。以下のような、統合失調症による「不可逆的な変化」に直面することも少なくありません。
このような状況で、自分の将来に希望が持てなくなることもあります。しかし、そこで大切なのは「今だからこそできること」に目を向けることです。

「リカバリー」とは、統合失調症を抱えながらも、自分らしく生きていくことを目指す考え方です。社会復帰や働くことだけがゴールではなく、「自分のペースで、望む人生を歩んでいくこと」が大切にされます。
リカバリーの実現には、以下のような要素が土台となります。
回復期は、決して「ゴール」ではありませんが、新たなスタート地点でもあります。今できること、今だから見える景色に目を向け、前を向いて一歩ずつ進んでいくことが、真の意味での回復に繋がっていくのです。
統合失調症の回復期は、病状が落ち着き、社会復帰や日常生活への再挑戦が始まる重要な時期です。一方で、認知機能障害、陰性症状、再発リスク、服薬の葛藤、人生への迷いといったさまざまな課題や感情に直面することも少なくありません。
大切なのは、「以前の自分に戻ること」ではなく、「今の自分に合った生き方」を見つけていくことです。回復の過程で感じる苦しみや葛藤もまた、その人が真剣に人生と向き合っている証でもあります。
無理のないペースで、自分にとってのリカバリーを目指していきましょう。