「発達障害でうつ病になりますか?」というご質問を多くいただきます。この疑問に対して、私たちは「ストレスに起因する二次障害として、うつ病を併発する可能性があります」とお答えしています。この記事では、発達障害とうつ病の関係、併発の背景、そして予防や対策について詳しく解説していきます。
発達障害は、生まれながらにして脳の機能に偏りが見られる神経発達症の総称です。代表的なものに、以下の2つがあります。
これらの障害は、子どもの頃に診断されることが多いですが、大人になってから初めて気づかれるケースも珍しくありません。なお、発達障害は医学的に「治す」というよりも、特性を理解し、適切な支援や環境を整えることで生きづらさを軽減していくことが重要とされています。
うつ病は、気分の落ち込みや意欲の低下など、心の不調が長く続く精神疾患です。脳内のセロトニンなどの神経伝達物質のバランスの乱れが原因の一つとされますが、ストレスが引き金となって発症・悪化するケースも多くあります。
発達障害の方が、ストレスなどによって精神的な不調をきたす「二次障害」として、うつ病を発症することは決して珍しいことではありません。発達障害そのものが日常生活や社会生活に適応する上で多くの困難を伴うため、それにより長期間にわたってストレスが蓄積され、心が疲弊してしまうのです。

発達障害に伴って見られる二次障害には、以下のようなものがあります。
これらの症状は、発達障害自体と同様に生活に大きな影響を及ぼすものであり、適切な予防と対策が重要となります。
発達障害の方がうつ病を併発する背景には、いくつかの要因が考えられます。主なものは次の通りです。
発達障害の特性によって、子ども時代から社会生活に至るまで、目立ったトラブルがなくとも、日常的に細かな不適応を感じることが多くあります。例えば、学校や職場での評価が低かったり、人間関係がうまくいかなかったりすることが積み重なり、自己肯定感の低下につながってしまいます。このような状態が続くことで、やがてうつ病を発症するケースがあります。
一方で、発達障害の特性があるにもかかわらず、自分に無理をして周囲に合わせようとする人もいます。表面的には周囲に適応しているように見えても、その裏では大きなストレスや疲労を抱え続けることになります。その結果、自分自身の軸を見失い、心身ともに限界を迎え、うつ病を発症することがあるのです。
成人の発達障害の方の場合、うつ病を発症したことをきっかけに心療内科を受診し、その際の問診や生活歴の中で、背景にある発達障害が初めて見つかるというケースが多く見られます。学生時代よりも社会に出てからの方が、ストレスの種類も量も増えるため、自覚していなかった特性が顕著に表れ、心身のバランスを崩してしまうのです。
発達障害にうつ病が併発した場合、まずはうつ病の治療を優先することが重要です。精神的な安定を取り戻すことが先決であり、その後に発達障害への理解と対策を進めていく必要があります。
ただし、発達障害を背景に持つ場合は、うつ病が慢性化しやすい傾向にあり、一般的な治療では改善が難航することもあります。そのため、両方の疾患への並行的な対応が求められます。

最も重要なのは、うつ病の発症を未然に防ぐこと、すなわち予防です。そのために、以下のような対策が考えられます。
できるだけ早い段階(小学生までなど)で発達障害の特性に気づき、療育的な支援を受けることで、ストレスの少ない環境を整えることが可能です。通級指導や専門支援を活用し、子どもの頃から適応スキルを身につけることが重要です。
大人になってから発達障害に気づいた場合は、環境調整がポイントになります。自分の特性に合った職場や人間関係を選ぶことで、日々のストレスを軽減することが可能です。必要に応じて、就労移行支援や専門機関への相談も検討しましょう。
発達障害の特性は一生続くものですが、自分自身の傾向を把握し、対処法を身につけることで生きやすさを向上させることができます。カウンセリングや行動療法などを通じて、対人スキルや感情コントロールの方法を習得することが推奨されます。
感覚過敏や疲れやすさなど、発達障害特有のストレス要因は避けがたいものです。だからこそ、休息の取り方やリフレッシュ方法を習慣化し、効率的なストレス解消法を身につけることが大切です。
発達障害とうつ病は、それぞれ異なる精神疾患ですが、発達障害を持つ方は日々のストレスや生きづらさを背景に、うつ病を二次的に併発することがあります。うつ病の併発により、治療はより複雑になりますが、早期発見と予防的な対応により、そのリスクを大きく下げることが可能です。
まずは自分の特性を理解し、無理のない範囲で環境を整え、ストレスと上手に付き合うことが、長期的な心の健康につながります。