【ASD】自閉症スペクトラムの人の道順へのこだわりについて

道順にこだわる理由その1: 道順が1つしかないと思い込んでいるから

道順にこだわる理由その1: 道順が1つしかないと思い込んでいるから

自閉症や発達障害のある方は、想像力の欠如などの特性から、別の考え方を持つことが難しい場合があります。そのため、「目的地に行く道はこのルートだけだ」と思い込んでしまい、別の道順があるという考えに至らないことがあります。
普段通りの道順とは異なるルートを通ると、「この道では目的地にたどり着けない」と感じてしまう可能性があります。

道順にこだわる理由その2: こだわる道順に興味を引くものがあるから

特定の道順にこだわる理由として、そのルートに本人が興味を持つものがあることが考えられます。
たとえば、『電車が見える』『公園に寄れる』『道路沿いで車が見える』『お店が見える』『友達の家の前を通る』『信号や線路を通る』『企業の看板やロゴが見える』といった要素が挙げられます。

自閉症の方が好きなものはこれらのように分かりやすいものから、『人の家の室外機や換気扇が見える』『ドアが閉まる様子が見える』『お店ののぼり旗』『ビルや電信柱の汚れ』『道路標識』など、ちょっとした物事である場合もあります。

このように興味を引くものがあるために、特定の道順を好むことがあります。

道順にこだわる理由その3: 空間認知能力が低いから

道順にこだわる理由その3: 空間認知能力が低いから

空間認知能力とは、その空間において人や物との位置関係を把握する能力です。
この能力には、「方向」「距離」「高さ」「大きさ」「広さ」「移動速度」など、さまざまな感覚が関連しています。

自閉症や発達障害のある方は、空間認知能力が弱いことがあります。
空間認知能力が低いと、自分の位置や向かう先がわからなくなる、いわゆる『方向音痴』になることがあります。また、地図の見方が分からないことにもつながります。

自閉症や発達障害の特徴として、空間認知能力が低いことから、『運動が苦手』『人や物とぶつかりやすい』『転びやすい』といったことが見られます。
空間認知能力が乏しいと、一本手前の道を曲がっただけでも、自分がどこにいるのかわからなくなってしまいます。

さらに、自閉症や発達障害のある方は、予想や見通しを立てるのが苦手であるため、自分がどこにいるのかがわからなくなり、不安やストレスを抱えたり、どうすればよいのか分からずパニックに陥ることがあります。

自閉症の方の中には、車や電車、自転車などの乗り物が好きな方が多くいらっしゃいます。
乗り物が好きな理由には、『車や電車自体が好き』『動く景色を眺めるのが好き』『揺れや振動が好き』など、さまざまなものがあります。

自閉症や発達障害のある方は、『感覚鈍麻』で感覚の感度が鈍かったり、こだわりや好き嫌いから行動の幅が狭まり、日常生活の中で受ける刺激が少ないことがあります。
そのため、刺激が少ないと自分で刺激を求めて自傷行為を行ったり、くるくる回ったり手を叩いたりして外部の刺激を求めることがあります。

特定の道順では、「次に期待しているものが見える」「このカーブで揺れる」といったことを理解しているため、安心して刺激を得るために道順にこだわることもあります。

道順にこだわる理由その5: こだわる道順に思い入れがあるから

特定の道順にこだわる理由として、その道順で過去に良いことがあったという記憶や思い入れが関係していることがあります。
たとえば、『知り合いに出会えた』『話しかけてもらえた』『好きな車が見えた』『お菓子を買ってもらえた』といった良い思い出がある場合です。

反対に、別の道を嫌がる理由として、『うるさい音が聞こえた』『苦手なものがあった』『怖い人がいた』『犬に吠えられた』『威圧感のある建物がある』といった苦手な記憶や思い出が影響していることもあります。

自閉症や発達障害のある方は、時間の概念の理解が難しいこともあり、これらの良い思い出や嫌な記憶が、何年も前の出来事であったり、お母さんも覚えていないような幼い頃の話である場合もあります。

道順へのこだわりへの対応方法

道順へのこだわりへの対応方法

道順に強いこだわりを持っている場合、急用や事情によって道順を変更することが困難になることがあります。
以下に、そのような場合に対処できるよう、道順へのこだわりに対する基本的な対応方法をご紹介します。

見通しを持たせるために事前説明を行う

道順にこだわる大きな理由は、今まで経験したことのないルートを通ることへの不安です。

普段と異なる道順で目的地に行く場合には、あらかじめ説明をして見通しを持たせ、不安を取り除いてあげることが重要です。

見通しを持たせるために説明する項目

  • どのような理由で普段とは違う道順で行くのか
  • 経由地はどこなのか
  • どこを通るのか
  • 所要時間はどのくらいなのか

ルートの説明に加え、普段とは異なる道を通っても目的地にたどり着けること、そして不安や心配をする必要がないことを伝えてあげましょう。
見通しを持たせるためには、ツールを使って視覚的に伝えることが欠かせません。
スケジュール表を用いたり、紙に書いて説明する方法があります。

また、地図が分かる場合には地図を使ってルートを確認する方法もあります。
PCやタブレット、スマートフォンがある場合には、Googleマップやストリートビューで実際の移動風景を事前に見せながら説明するのも良いでしょう。

別のルートを使うときには、「大好きな電車が見られるよ」「学校の前を通るよ」といった、子どもが興味を引きそうなことを教えてあげるのも効果的です。

安心グッズを持たせる

不安を感じることに対して落ち着ける安心グッズがある場合には、それを持参して移動中に気を紛らわせる方法も有効です。

車であれば、好きな曲を流したり、DVDでアニメを見せるのも良いでしょう。

道順へのこだわりを崩す

道順にこだわってしまった場合には、そのこだわりを無理に崩す方法もあります。
こだわりは、その人の経験不足や変化に対する不安が原因である場合があります。

このような場合には、事前に説明を行い、道順を変えてみるのも一つの方法です。
本人に分かりやすく事前説明することが大前提です。
道順が変更されると、最初は不安でパニックになるかもしれませんが、何度も経験することで、自分の中で対応方法や気持ちの折り合いを学ぶことにつながります。

また、目的地への道順が一つではないことも理解できるようになるでしょう。
自閉症や発達障害のある方のこだわりは、成長するにつれていつの間にかなくなったり、別の道順へのこだわりは、年齢の小さい子どもに多く見られ、年齢が上がるにつれて見られなくなる傾向があります。こだわりを崩すのが難しい場合や、無理に崩して本人に負担がかかる場合には、長い目で見守ることも必要です。

自閉症や発達障害のある方が道順にこだわる理由としては、空間認識への理解や見通しができないことへの不安、そして障害の特性が大きな要因となっています。
道順にこだわると、道路工事や事故などの物理的な事態や不意な予定変更に対応できなくなることがあります。

自閉症や発達障害のある方が道順にこだわる理由には、その人の経験や道順への理解、気持ちの折り合いをつけることが難しいということが多いです。
しかし、経験を重ねて学習することで、本人も「別の道でも行けること」「毎回同じ道でなくても良いこと」を学び、理解できるようになるはずです。

以上が、自閉症の方がルートや道順にこだわる理由についての説明でした。

最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。