抗うつ剤による眠気とその対策:治療を継続するためにできる7つの工夫

抗うつ剤は、うつ病をはじめとした様々な精神疾患の治療において

非常に有効な手段の一つです。

適切な薬物療法は、症状を緩和し、患者さんの生活の質を大きく向上させる可能性を持っています。

しかし一方で、抗うつ剤には副作用が伴うことがあり

その中でも特に多くの方が経験するのが「眠気」です。

日中の強い眠気は、仕事や学業、家事や育児といった

日常生活に支障をきたすことも少なくありません。

そこで本記事では、抗うつ剤による眠気のメカニズムを明らかにし

その対処法として有効な7つの具体策を紹介します。

副作用とうまく付き合いながら

安心して治療を続けていくための参考にしていただければ幸いです。


抗うつ剤が引き起こす眠気の背景

脳内の神経伝達物質と睡眠・覚醒の関係

人間の睡眠や覚醒の状態は、脳内の神経伝達物質によって調整されています。

代表的な物質には、以下のようなものがあります。

  • 睡眠に関与する物質:GABA(γ-アミノ酪酸)
  • 覚醒に関与する物質:セロトニン、ノルアドレナリン、ドパミン、ヒスタミン、アセチルコリン

抗うつ剤は、これらの神経伝達物質のバランスを調整することで症状の改善を図ります。

しかし、その作用が副次的に眠気を引き起こす要因ともなってしまうのです。


抗うつ剤が眠気をもたらす主な理由

抗うつ剤によって眠気が生じる理由には、以下の3つが考えられます。

  1. 覚醒物質の作用の抑制
     抗うつ剤の中には、ヒスタミンやアセチルコリン、ノルアドレナリン、セロトニンといった覚醒に関わる物質の働きを抑えるものがあります。これにより、日中に強い眠気が生じることがあります。
  2. 夜間の睡眠の質の低下
     一部の抗うつ剤では、脳内の神経伝達物質の変動が夜間の睡眠の質に影響を与え、浅い睡眠を引き起こす場合があります。その結果、十分な休息が得られず、日中に眠気を感じることがあります。
  3. 服用初期の体の反応
     抗うつ剤を飲み始めた直後や、薬の種類や量を変更した際に、一時的に強い眠気が出ることがあります。これは、体が薬に慣れていない段階でよく見られる反応です。

薬以外にも眠気の原因があることに注意

薬以外にも眠気の原因があることに注意

眠気は抗うつ剤の影響に限らず、他の要因によっても引き起こされることがあります。

以下のような原因にも注意が必要です。

  • 精神的な不調
     うつ病そのものが強い倦怠感や眠気を伴うことがあります。
  • 睡眠の質の低下
     睡眠時間が確保されていても、いびきや睡眠時無呼吸症候群などによって質の低い睡眠が続いている場合、日中の眠気が出やすくなります。
  • 生活リズムの乱れ
     夜更かしや不規則な生活習慣により、体内時計が乱れ、覚醒リズムが狂うことで眠気を感じやすくなります。
  • 女性ホルモンの影響
     月経前や更年期など、ホルモンバランスの変動によっても眠気が強くなることがあります。

抗うつ剤の種類と眠気の強さの違い

抗うつ剤にはさまざまな種類があり、眠気の出やすさにも差があります。

  • 鎮静系抗うつ剤(例:リフレックス、レメロン、デジレル)
     抗ヒスタミン作用や抗セロトニン作用が強く、比較的眠気を引き起こしやすい傾向にあります。
  • 三環系抗うつ薬(例:トリプタノール)
     古くから使用されているタイプで、強い抗ヒスタミン作用により眠気を伴うことが多いです。
  • SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)(例:パキシル、ルボックス)
     一般に眠気は少なめですが、人によっては眠気を感じることもあります。
  • SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)(例:トレドミン、サインバルタ)
     ノルアドレナリンによる覚醒作用があるため、比較的眠気は少ないとされています。

眠気を治療に活かす視点も

眠気を治療に活かす視点も

眠気は一見すると煩わしい副作用に思われがちですが

実は治療の一環として有効に働くこともあります。

特に不眠を訴えるうつ病患者さんにとっては

鎮静作用のある抗うつ剤が安眠を助け、心身の回復につながることもあります。

また、休養を必要とする初期のうつ病治療においては

薬の作用により眠気が出ることで、自然と身体を休めることができるケースもあるのです。


抗うつ剤による眠気への7つの対処法

眠気が強いと感じた場合、以下のような具体的な対策が有効です。

  1. しばらく様子を見る
     服用初期や薬の変更後には、体が慣れるまでの間、眠気が出やすくなります。数日~数週間ほど様子を見てみましょう。
  2. 服用回数を分けてみる
     一日の用量を2~3回に分けて服用することで、血中濃度の急激な変動を避け、副作用を緩和できる場合があります。
  3. 寝る前の服用に切り替える
     眠気を感じる薬は、可能であれば夜の就寝前に服用することで、日中の眠気を避けることができます。
  4. 夜用に鎮静系抗うつ剤を追加する
     睡眠の質が悪い場合には、主治医と相談の上で夜間用の鎮静系抗うつ剤を追加することで、昼間の眠気を軽減できることがあります。
  5. 薬の増量ペースを調整する
     増量によって眠気が強くなった場合は、無理に急増せず、増量ペースをゆるやかにすることで体が適応しやすくなります。
  6. 減量を検討する
     どうしても眠気が強く、生活に支障が出る場合は、主治医と相談して薬の量を調整してもらうことが大切です。
  7. 他の薬に変更する
     薬によって眠気の強さは異なるため、自分に合った薬を見つけることも選択肢の一つです。SSRIやSNRIなど、眠気が比較的少ない薬へ変更することで改善されることがあります。

おわりに:副作用を味方にしながら治療を続けるために

抗うつ剤による眠気は、不快な副作用の一つではありますが

その背景には薬の作用機序や身体の反応があります。

重要なのは、眠気がどこから来ているのかを理解し

それに対してどのような対処ができるかを知ることです。

無理に我慢したり、自己判断で服薬を中止するのではなく

主治医と相談しながら、眠気と上手に付き合っていくことが

より良い治療結果へとつながります。

自分に合った方法を見つけて、安心して治療を継続していきましょう。