■ASDのコミュニケーションの特徴
かつて
「アスペルガー症候群」や「自閉症」と呼ばれていた特性は、ある程度共通点があるため、
連続体(スペクトラム)としてまとめて表現される「ASD」となっています。
ASDの人は、目を合わせるのが苦手であったり、曖昧な指示を理解できなかったりして、
対人関係に支障をきたすことがあります。
主な特性にはコミュニケーションが苦手、こだわりが強いなどがありますが、
感覚過敏を持つ人も多くいます。

■周囲の人と関係を築くことが難しい
自閉スペクトラム症(ASD)は、
他人との社会的なつながりや興味の範囲が狭いことから、周囲との関係構築が難しい障害です。
幼少期から視線を合わせない、共感力が低い、
コミュニケーション手段が限定されるなどの特徴があります。
また、「心の理論」と呼ばれる相手の感情や考えを推測し理解する能力にも問題があります。
同じ行動の反復や好き嫌いの極端さ、感覚の過敏さなどの行動面の特徴もあり、
生活上の配慮が求められます。
ASDは以前は広汎性発達障害(PDD)と呼ばれていましたが、
DSM-5からASDという名称に変更され、診断名には「スペクトラム(連続体)」
という言葉が追加されました。
これはASDの症状が多様であり、
その程度が障害のない人々も含めて連続していることを示しています。
2013年に診断名や基準が変更されたため、
それ以前に診断を受けた方は異なる診断名がついている可能性があります。
■対人的相互作用の質的な障がいとは
自閉症スペクトラム障害の主な特性の一つである「対人的相互作用における質的な障害」とは、
目線を合わせることが難しかったり、ボディランゲージが伝わりにくかったりする特徴があります。
この障害の診断には次の条件のうち2つ以上が当てはまる必要があります。
■対人関係を作ることが困難な理由
ASD(自閉スペクトラム症)の人たちが直面する問題の一つは、
他者との関わりの中で視線を合わせることや相手の表情や感情を理解する難しさです。
一般的に多くの人は会話中に相手の表情の変化から感情を読み取りますが、
ASDの人々は話し相手の目や眉、口角などの位置関係を個別に処理することがあります。
加えて他者の考えを推測する際に表情や文脈、行動を理解する難しさも感じることがあります。
そのため、ASDの人々は他者や状況に合わせるために
一つひとつの情報をつなぎ合わせる努力を継続する必要があります。
また、コミュニケーションや集団での行動では臨機応変さや暗黙の了解が求められますが、
これらは視覚的に捉えにくく、また個人によって解釈が異なる場合もあります。
こうした理解の難しさや曖昧さが、ASDの人たちの社会参加を困難にして、
その行動が周囲から不適切に受け止められる原因の一つとなります。
■こだわり/感覚過敏と鈍麻/不器用さ
ASD(自閉スペクトラム症)の人は手順や家具、
ルールなどにこだわる一方で興味範囲は限定されていますが、
関連知識は深く探求することが多いです。
ASDの人は特定の物や場所、順番に固執することで安心感を得る一方で、
状況によっては不安や緊張を感じ、その環境から離れない場合もあります。
したがって、
こだわりも個人の状態や環境との相互作用によって変化します。
ASDの人々の中には通常の五感に加えて特に敏感な感覚や逆に鈍感な感覚を持つことがあります。
感覚過敏は痛みや不快感が非常に強く、耐え難い場合があります。
また、身体の感覚や大きさを正確に把握することが難しく、身体を制御することや力の加減、
手先を使うことが難しいこともあります。
■ASDの過剰適応とは
ASD(自閉スペクトラム症)がある人の中には、
一見普通に生活しているように見えるものの、その裏側で人知れず多大な努力をしている人がいます。特に思春期になると、友人関係において独立しないようにしたり、
他者への配慮が一層求められる場面が増えます。
こうした状況でASDのある人は友人関係に馴染もうとして、
自分が興味を持っていない音楽を聴き、その話題を友人と共有するなど、
過剰な努力を重ねることが少なくありません。
このような努力は周囲から見れば楽しそうに友人と話しているように映りますが、
本人にとっては非常に大きな心理的負担となります。
この負担が積み重なると、メンタルヘルスに深刻な影響を及ぼし、
場合によっては不安やストレス、うつ状態に陥ることさえあります。
自分らしく安心して生活できるように、自身の特性理解、また周囲の理解が重要です。
■ASDのカモフラージュとは
ASD(自閉スペクトラム症)を持つ人が社会的な場面で、
自分の社会的コミュニケーションの困難を隠して装うことで
社会に受け入れられるようにする戦略を指します。これは特に女性に多いとされています。
カモフラージュを行う人は他人からどのように見られているかを常に意識し、
身振り手振りを真似たり、他者の行動を観察してそのスキルを理解しようと努力します。
しかし、
これが大きな心理的負担や疲労につながります。
過剰適応やカモフラージュは本人にとって大きなメンタルヘルスのリスクになり得ます。
しかし、
これらを行っている本人が悪いわけではありません。
過剰適応やカモフラージュをしなくても過ごしやすい環境が重要です。
例えば、幼少期から適応や社会スキルばかりを重視せず、
困ったとき相談できる人がそばにいることが大切です。
■まずは肯定的な理解から
人には理解力やコミュニケーション能力、表現力、
自分を調整する能力などさまざまな才能があります。
ASD(自閉スペクトラム症)を持つ子どもはこれらの能力のバランスが
特に大きく異なるとされています。ASDの子どもとの関わりが難しいとき、
大人はその子の特性に焦点を当ててしまいがちで「解決したい」という気持ちに駆られます。
しかし、
急いで解決しようとするのではなく、まずは子どもをじっくり観察して理解することが重要です。
観察する際は子どもの弱点だけでなく、好みや得意なこと、長所などにも注意を払いましょう。
子どもは大人の姿勢に敏感であり、肯定的な理解がある中でより良い関係が築かれます。
■二次障害が生まれない関わりが大切
ASDのある子どもとの関わりで懸念されることは、うつ病などの併存症や不登校、暴言・暴力、
自傷行為などの「二次障害」です。
このような二次障害は過度なストレスやトラウマにさらされることで起こります。
二次障害を防ぐためには、まずその子の好みや落ち着ける場所、
信頼できる人物といった基盤を整えることが重要です。
この基盤を築きながら、「具体的な目標が見える」環境や工夫を導入することが有益です。
安心感をもとに「成し遂げた経験」や「挑戦して成功した機会」を重ねることや、
難しい問題について人に相談する方法を身につけることが必要です。
■大切な友人を失わないように
人とよくトラブルになる等、なぜ人とうまくいかないのか、
その原因は自分ではなかなかわかりにくいものです。
自分の行動が人からはどう見られているのか、他者視点を持つことがASDの人には難しいのです。
子どもの時は多くの人が教えてくれますが、大人になると、
踏み込んで意見を言ってくれる人は少なくなります。
時には周りの人がさりげなく忠告してくれることもあるでしょう。
しかし、
ASDの人はせっかくの忠告に気づかないこともよくあります。
すると、長く付き合ってくれた人が離れていくことや、
逆にASDの人が被害的に受け止めてしまうかもしれません。
可能なら、親しい同僚や友人にうまくいかない具体的な場面を伝えて、
どうしたらいいかアドバイスしてもらいましょう。
そういう人がいない場合には、発達障害についての経験の多い人にカウンセリングを受けるなど、
専門家の援助を受けることが必要です。
