うつ病です。治療しても活動量が増えません

うつ病の治療を続けても活動量が増えないとき──動くことの重要性と「リワーク」の活用

うつ病の治療を受けているものの、「なかなか活動量が増えずに困っている」と感じる方は少なくありません。気分の落ち込みや不安が軽減されても、生活の中で動き出す一歩が踏み出せない――それは決して「気の持ちよう」ではなく、病状の一部として多くの人が直面する壁です。この記事では、うつ病治療と活動量の問題について整理し、対策の一つとして「リワークプログラム」の活用についてもご紹介します。


うつ病は「脳の不調」──治療の基本

うつ病は単なる「気分の落ち込み」ではなく、脳の働きに不調が生じることで、感情や思考、行動に影響が出る病気です。主な背景としては、脳内物質であるセロトニンの不足などが知られています。

うつ病の治療には、以下の3つの柱があります。

  1. 休養:脳をしっかりと休ませることが最優先です。働いている方の場合、休職して静養することが一般的です。
  2. 薬物療法:主に抗うつ薬(SSRIなど)を継続的に服用し、脳内物質のバランスを整えます。睡眠薬や抗不安薬などの補助薬が併用されることもあります。
  3. 精神療法:ストレスとの向き合い方や思考パターンの見直しを図る治療法で、必要に応じて福祉制度の活用が勧められることもあります。

治療の段階と休職期間の流れ

うつ病には病状の進行に応じた段階があり、それぞれに応じた対応が求められます。

うつ病の3つの病期

  • 急性期:症状が重く、不安や落ち込みが強い時期。休養が最優先されます。
  • 回復期:症状がやや落ち着き、徐々にリハビリ的な活動を取り入れていく時期。
  • 再発予防期:復職など社会復帰を進めつつ、再発を防いでいく段階です。

休職の3段階

  • 前期(休養期):とにかく休むことを最優先とします。
  • 中期(リハビリ期):体調が安定してきたら、少しずつ日常的な活動を再開していきます。
  • 後期(復帰準備期):仕事に近い活動を取り入れて、復帰の準備を整えます。

治療しても「動けない」──中期での活動量の壁

実は多くの方が、回復期やリハビリ期に入ってから活動量が思うように増えず、時間だけが経過してしまうという課題に直面します。これは決して珍しいことではなく、うつ病の特徴の一つです。

徐々に改善する人も多いですが、「一歩が出ない」「何かを始めようと思っても体が動かない」という状況が長引くと、停滞感や自己否定感を抱えやすくなります。


行動活性化という考え方とその限界

うつ病治療の中で、「動くことで意欲がわいてくる」という行動活性化の考え方があります。たとえ気分がすぐれなくても、まず何かをやってみることで脳が刺激され、やる気や前向きな感情が生まれやすくなるというものです。

しかし、実際には「その一歩が踏み出せない」ことが多々あります。意欲が低下している状態で、自分から行動を決めて実行するのは非常に困難です。こうした状況が続くと、いわゆる「膠着状態」となり、長期間活動が増えないこともあります。


枠組みを活用する──自発性に頼らず「動く環境」を作る

自発性に頼らず「動く環境」を作る

活動の第一歩が踏み出せない場合、自分で計画して行動するのではなく、「あらかじめ決められた枠組み」に従って動くだけにするという方法があります。これによって、意欲の低下に左右されず、動くことそのものに専念しやすくなります。

例えば:

  • 毎日決まった時間に散歩をする
  • 決まった曜日にスポーツクラブに通う
  • リワークプログラムに参加する

このように、行動の「型」を作っておくことで、行動を開始するハードルを下げることができます。


リワークプログラムとは?──グループで取り組む復職支援

リワークプログラムとは?──グループで取り組む復職支援

「リワーク」とは、主に休職中の方を対象とした復職支援のためのリハビリプログラムです。多くは医療機関や福祉施設で実施され、定期的に通所してグループで活動を行います。

リワークの主な効果

  1. 活動量の増加:定期的に外出し、一定時間を過ごすことで、日々の活動量を少しずつ増やしていきます。
  2. ストレス対処法の習得:プログラム内でストレスに強くなるための認知行動療法的な訓練や情報提供が行われることもあります。
  3. 内省と共感の獲得:同じようにうつ病で休職している人たちとの交流を通じて、自分の状態を振り返る機会や新たな気づきが得られます。

リワークの注意点と限界

効果のあるリワークですが、以下のような点には注意が必要です。

  • 時間的拘束が長い:1回数時間、週に複数回の通所が必要になることがあります。
  • 費用がかかる:保険適用されることが多いですが、一定の自己負担は必要です。
  • 対人交流が苦手な人には負担になることも:人との関わりが刺激になる反面、負担に感じる場合もあります。

リワークが向いている人とは?

リワークプログラムが特に有効とされるのは、次のようなケースです。

  • 活動量がなかなか増えない場合
  • 再発のリスクが高く、ストレスへの対処法を学ぶ必要がある場合
  • 他者との交流の中で自己理解を深めたい場合

まとめ──「動けない」のはあなたのせいではない。工夫と枠組みで回復を支える

うつ病の治療においては、まず休養をとって症状の改善を目指します。しかし、症状がある程度軽快しても、意欲の低下や無力感が強く残り、なかなか動き出せないという課題に直面することも少なくありません。

このとき、無理に「やらなければ」と自分を追い込むのではなく、動くための枠組みを作り、そこに身を置くことが効果的な対策になります。そして、その一つの有効な手段がリワークプログラムです。

うつ病と向き合うことは決して簡単なことではありません。しかし、自分に合った方法を少しずつ取り入れることで、回復への一歩を確かなものにすることができます。