うつ病の原因は?

うつ病の原因は?
脳の不調を中心としつつ、複数の要因が関与する複雑な病

うつ病とは、長期的な抑うつ気分や興味・喜びの喪失といった「うつ症状」が続く精神疾患です。その背景には脳の働きの不調があると考えられており、特に脳内の神経伝達物質であるセロトニンの不足が関与しているという「セロトニン仮説」が有力とされています。

しかし、うつ病の原因はそれだけではありません。ストレス、遺伝的要因、ホルモンの影響など、さまざまな要素が複雑に絡み合っており、現時点でも未解明の部分が多く残されています。本記事では、「うつ病の原因は何か?」という問いに対し、現在までにわかっている主な知見を丁寧にご紹介します。

うつ病は脳の不調が関係する病気

まず、うつ病は「脳の不調」を背景とする疾患であるという点が、他の精神的な問題(たとえば適応障害など)とは異なる点です。脳内のセロトニンという神経伝達物質が不足すると、感情や気分を安定させる働きが弱まり、持続的な抑うつ状態を引き起こすと考えられています。

ただし、うつ病もストレスによって悪化しやすい傾向があり、発症のきっかけとして強い心理的・身体的ストレスが関与することも少なくありません。適応障害とは異なり、ストレス要因が取り除かれてもすぐに改善するわけではありませんが、ある程度時間をかけて回復が期待できる場合もあります。

セロトニン仮説とは何か?

セロトニン仮説とは、「うつ病は脳内のセロトニンの量が不足することによって生じる」という仮説です。これに基づいて開発された抗うつ薬(SSRI:選択的セロトニン再取り込み阻害薬)は、セロトニンの濃度を脳内で高める作用があり、多くの患者さんに一定の効果が見られることから、セロトニン仮説の有力性が高まっています。

しかしながら、セロトニン仮説にも限界があります。SSRIがすべての患者に効果的であるわけではなく、薬の効果が現れるまでに2〜4週間ほどの時間がかかることもあります。また、ノルアドレナリンやドーパミンといった他の神経伝達物質の関与も指摘されており、うつ病のすべてをセロトニンだけで説明するのは困難です。

ストレスとの関係性

うつ病は、慢性的なストレスにより悪化することが多く、セロトニン仮説とストレスの関係は密接です。ストレスがかかることでセロトニンの分泌量が減少し、気分の落ち込みが起こるといったモデルが一般的に語られます。

しかし実際には、セロトニンへの「感受性」や、ストレスによって変化する神経の状態も関係しており、ストレス→セロトニン減少→うつ病という単純な流れでは説明しきれない部分も多くあります。

セロトニン仮説の限界と補足的な視点

セロトニン仮説を補完する形で、以下のようなポイントも近年注目されています。

・抗うつ薬の効果が遅れる理由
 セロトニンが神経細胞間に増えるだけでなく、それによって神経のネットワークが再編成されること
 に時間がかかるのではないかと考えられています。

相性の問題
 同じSSRIでも、ある人には効果があるのに、別の人には効かないといった個人差が見られます。

・他の神経伝達物質
 ノルアドレナリンやドーパミンの働きも、うつ病に関係しているとされます。

遺伝的要因の関与

うつ病は統合失調症などに比べると遺伝的影響が比較的少ないとされますが、それでも家族内での発症傾向が見られるケースもあります。遺伝的素因としては、「ストレスに対する感受性の高さ」や「思考パターンの癖」といった形で現れることもあるため、単に「遺伝=発症」ではなく、環境との相互作用が重要になります。

ホルモンとの関係性

うつ病にはホルモンの影響が関与しているとされ、特に以下のホルモンが注目されています。

①女性ホルモン
 女性には、生理周期や出産、更年期など、ホルモンの大きな変化がある時期にうつ病が発症しやすい
 傾向が見られます。

 ・PMS/PMDD(生理前症候群/月経前不快気分障害)
 ・産後うつ病
 ・更年期うつ病

②コルチゾール
 いわゆる「ストレスホルモン」。ストレス下で分泌が増加し、慢性化すると脳に悪影響を与える可能性
 が示唆されています。

③甲状腺ホルモン
 甲状腺機能低下症ではうつに似た症状が出ることがあり、血液検査などでの確認が必要とされます。

ウイルス感染との関連性の可能性

最近の研究では、うつ病の一部にウイルス感染が関与しているのではないかという仮説も浮上しています。例えば、ヘルペスウイルスの一種であるHHV-6の感染歴がある人に、うつ病の発症率が高いという研究結果もあります。ただし、これらの研究はまだ初期段階であり、確実な結論は得られていません。

現実的な対策とは?

うつ病の原因は複雑で、特定のひとつの原因に絞ることは困難です。そのため、現実的な対策としては次のような多角的なアプローチが重要になります。

・薬物療法の活用
 SSRIをはじめとした抗うつ薬による治療が基本となります。

・ストレス対策の実践
 心身のストレスを減らす生活習慣の改善や、カウンセリングなどの心理的支援が有効です。

・ホルモンのチェック
 特に女性では、ライフステージに応じてホルモンバランスを確認し、必要に応じて医師と連携して治
 療を行うことが推奨されます。

・甲状腺などの身体疾患の除外
 うつ病と見分けがつきにくい身体疾患が隠れている場合もあるため、血液検査などによる精査が重要
 です。

まとめ

うつ病の原因は、現代医学においてもなお完全には解明されていません。しかし、現段階では「脳の不調」、特にセロトニンの不足という観点が大きな要因として考えられており、それを基盤に治療が行われています。

一方で、ストレス・遺伝・ホルモン・身体疾患・ウイルス感染など、多くの因子が複雑に絡み合っていることも事実です。そのため、単一の視点にとらわれず、総合的な理解と対応が求められます。

自分自身の状態を知り、必要に応じて専門医と連携しながら、個々に合った形で適切にケアしていくことが、回復への大切な一歩となるでしょう。