発達障害のあるお子さんを育てる親御さんにとって、日々の子育ては多くの困難と向き合う連続です。「本当にこれで良いのだろうか」「子どもにとって最善の対応ができているのだろうか」と悩むこともあるでしょう。その中でよく耳にする言葉のひとつが「毒親(どくおや)」という言葉です。
毒親とは、子どもに対して過干渉・過保護・支配的で、無意識のうちに子どもの成長を妨げてしまう親のことを指します。しかし、毒親=愛がないというわけではありません。多くの場合、「子どもが大切だからこそ」との想いが強すぎて、無意識に子どもの可能性を奪ってしまっているのです。
今回は、発達障害のあるお子さんを育てるうえで、毒親と良い親の違いについて考え、自分自身の子育てを振り返るヒントになればと思います。
1. 自立を妨げるか、促すか

毒親は過干渉・過保護な傾向があります。例えば、成人している子どもに毎月多額のお小遣いを与えてしまう、事業所への送り迎えを過度に続ける、生活の中の困りごとにすぐ介入してしまう、などです。このような行動は一見、愛情深いように見えますが、実際には子どもが自分で判断し、失敗し、成長する機会を奪ってしまいます。
一方、良い親は「自分がいなくても生きていける」ことを目標に、子どもが自分の力で考え、行動できるようサポートします。壁にぶつかったときには取り除いてあげるのではなく、「どう乗り越えるか」を共に考える姿勢が大切です。失敗や苦労をしながら成長するプロセスを尊重し、子どもを見守る――それが良い親の在り方です。
2. 支配するか、尊重するか
毒親は、子どもの人間関係や進学、就職といった重要な選択に対して強く口を出し、自分の価値観を押し付けてしまうことがあります。「この子のため」と信じて疑わず、子どもが本当に何を望んでいるかに目を向けられない場合が多いのです。
反対に、良い親は子どもを一人の人格として尊重します。子どもがどんな選択肢を持ち、それぞれにどんなメリット・デメリットがあるかを丁寧に説明したうえで、最終的な意思決定を子どもに委ねます。失敗する可能性があったとしても、「自分で選んだ結果」に対して責任を持つ経験を積ませることが、将来の自立に繋がるのです。
「悪いことをしたとき」にも、「やめなさい」と頭ごなしに叱るのではなく、なぜそれが問題なのか、社会的にどのような影響を及ぼすのかを伝えたうえで、自分で考える習慣を育てることが求められます。
3. 体裁を守るか、幸せを優先するか
毒親の特徴として「親の体裁を気にする」傾向があります。特に発達障害という見えにくい特性に対して、「障害を認めたくない」「人に知られたくない」という感情が働くことがあります。結果として、適切な療育や支援を受ける機会が奪われてしまうこともあるのです。
良い親は、「この子にとって何が幸せなのか」を軸に考えます。障害の特性を理解し、その子に合った環境――たとえば支援学校や療育機関への通所などを柔軟に検討します。また、親自身が発達障害について学び、専門家の意見を取り入れる姿勢も大切です。
時には親の無理解や過剰な期待が、子どもの心に大きなプレッシャーを与えてしまうこともあります。親が感情的に叱責することで、子どもは「自分はダメだ」と思い込み、自己肯定感を低下させてしまう可能性もあるのです。
発達障害のある方にとって、親の存在がストレスになってしまうことがあります。前向きに自立を目指そうとしていても、親からの否定的な言葉や過干渉が足かせになることもあるのです。では、自分の親が毒親ではないかと感じたとき、どのように対応すれば良いのでしょうか?
1. 物理的な距離を取る
親との関係性が精神的な負担になっている場合、まずは物理的な距離を置くことが有効です。進学や就職など、ライフステージの変化をきっかけに実家を出るという選択は自然で現実的です。
一人暮らしが難しい場合は、グループホームやシェアハウスのような支援付きの環境を検討することもできます。土日を実家で過ごすことが逆にストレスとなり、週明けに情緒が不安定になるケースもあるため、「住環境」は心身の安定に直結する重要な要素です。
2. 親以外の相談相手を持つ

本来であれば、親は子どもにとって最も身近で信頼できる相談相手であるべき存在です。しかし、毒親の場合はその役割を果たせないこともあります。そんな時は、親以外の相談相手を意識的に見つけることが大切です。
信頼できる友人やパートナー、就労支援スタッフ、福祉関係者、カウンセラーなど、第三者の存在が精神的な支えとなります。他者との関わりの中で、自分の思いや悩みを整理し、冷静な判断ができるようになります。
親はつい、「子どもが失敗しないように」「苦労しないように」と先回りして手を差し伸べたくなるものです。しかし、過剰な介入は、子ども自身の成長を阻んでしまうリスクを孕んでいます。
発達障害のあるお子さんには、確かに特性に応じた支援が必要です。しかし、支援とは「手を出しすぎること」ではなく、「手を引きすぎないこと」。本人が自分の力で選び、失敗しながらでも立ち上がっていく力を信じてあげることが、何よりのサポートになります。
毒親と良い親の違いは、子どもに対してどれだけ「信頼」と「尊重」の姿勢を持てるかにかかっています。発達障害があるからこそ、子どもの特性を理解し、適切な距離感でサポートしていくことが求められます。
愛情はあっても、それが形を間違えば子どもを苦しめることにもなり得ます。自分の対応を振り返り、「本当にこの子の将来にとって良い選択なのか?」を問い続けること。それが、良い親であり続けるための第一歩となるのではないでしょうか。